葉物畑をしばらく見に行けないでいるうちに、草は大きく伸び、畝の形もほとんど見えなくなっていました。まずは草を刈り、その中に残っていたほうれん草・小松菜・ルッコラの種を回収。採った種は、昔から使われてきた唐箕(とうみ)で選別し、次の栽培へつなぎます。
一方、草の中でトマトだけは枯れて全滅しました。うまくいったことも、失敗したことも隠さず、2026年8月の葉物畑の現在地を記録します。
まずは、草に覆われた畑を刈り開く
畑に入って最初に目に入ったのは、どこまでも続く草でした。放置していた時間のぶんだけ勢いよく育ち、場所によっては作物の姿がまったく見えません。何かを始める前に、まず通路と播種する場所を確保するところからです。
一面を裸地にするのではなく、必要なところを中心に刈っていきました。草に負けたというより、いったん畑の状態を読み直すための草刈りです。

写真:葉もの畑・草刈り後。通路と播種する場所を確保しました。
アリカでは不耕起を原則に、根と菌糸のつながりや土の構造を大きく壊しすぎない畑を目指しています。生きた根がある根圏では、根から出る物質を介して微生物群集が形づくられ、菌根菌などとの関係も生まれます。
これは「草を残せば何でも解決する」という話ではありません。作物を育てる場所を確保しながら、根・微生物・土のつながりをどう残すか。移行途中の畑で、その加減を探っているところです。
草の中から、三つの葉物の種を採る
草を刈り進めながら、種をつけた株を拾い出しました。今回の採種は、ほうれん草、小松菜、ルッコラの三種類です。茎ごと集め、乾いた種や莢を落としていきます。
同じ「種取り」でも、作物によって残り方も、採れる量も、虫害の出方もまったく違いました。その差が、そのまま今年の畑の記録です。

写真:草の中から集めた、ほうれん草の採種株。
小松菜やルッコラのようなアブラナ科は、細長い莢の中に種が入っています。乾いた株を集めてみると、外から見ただけでは分からなかった虫害もはっきり見えてきました。

写真:小松菜とルッコラの採種株。乾いた莢から種を取り出しました。
昔の農具・唐箕が、超絶便利だった
採ったままの種には、細かな茎、莢、葉、軽いごみがたくさん混ざっています。そこで使ったのが、昔の選別機械である唐箕です。
上から種とごみを入れ、横のハンドルを回して風を送ると、軽いものと重いものが分かれて別々に落ちてきます。電気も難しい設定も不要。仕組みは単純なのに、手でより分けるのとは比べものにならない速さでした。

写真:昔から使われてきた唐箕を側面から見たところ。
この唐箕が本当に便利でした。古い機械だからこそ、何をしているのかが目で見て分かり、風の強さも手で調整できます。種の重さや混ざり方に合わせて回し方を変えると、選別がどんどん進みました。
今回の種取りで、いちばん「これは使える」と感じた道具です。昔の農具の完成度に、改めて驚かされました。

写真:唐箕の正面。ハンドルで風を起こし、種と軽いごみを選別します。
小松菜は少量、ほうれん草はたっぷり
小松菜は、ほとんど種が残りませんでした。採種株にも種にも虫害が大きく、選別したあとに手元へ残ったのはわずかな量です。それでも採れた種は捨てず、一粒ずつ手で播きました。
量は少なくても、この畑で採れた次の世代です。まず発芽するか、その後どう育つかを見ます。

写真:虫害後に残った小松菜の種。採れた量はわずかでした。
ほうれん草は、対照的にたくさん採れました。選別後も十分な量が残り、こちらはクリーンシーダーの不耕起用ディスクを使って播種しました。耕さずに溝を切り、種を入れていく方法です。
手播きした小松菜と、機械で播いたほうれん草。播き方の違いも含め、これからの発芽と生育を比べていきます。

写真:唐箕で選別した、たくさんのほうれん草の種。
ルッコラも採種し、唐箕で選別しました。小さな種を茎や莢のくずから分ける作業でも、唐箕が活躍しました。採れた量だけで成功・失敗を決めず、どの株から、どんな状態の種が残ったかを次の観察につなげます。

写真:唐箕で選別したルッコラの種。
草は元気なのに、トマトだけが全滅した
葉物畑のもう一つの大きな出来事が、トマトの全滅です。周囲の草は元気に伸びているのに、トマトだけが草の中で枯れていました。
葉の食べられ方や畑で見た虫の状況から、ニジュウヤホシテントウの食害が大きな原因だったと見ています。奈良県の害虫資料でも、成虫と幼虫がトマトの葉を食害し、場合によっては花・茎・果実もかじることが示されています。
ただし、これは畑での観察に基づく見立てで、比較試験をして原因を一つに確定したものではありません。来年は発生時期、株ごとの被害、周囲の草や虫の状態も記録し、今年より早く変化をつかみます。
来年へ向けて、冬草ミックスを播く
現在:アリカは2026年、慣行栽培だった畑を引き継ぎ、自然栽培への移行を始めた段階です。夏草ミックスは地表へのばらまきでは発芽せず、失敗しました。トマトの害虫被害を抑える仕組みも、まだできていません。
これからの計画:この失敗を踏まえ、葉物畑には冬草ミックスをクリーンシーダーの不耕起用ディスクで播きます。耕さずに種を土へ届かせ、発芽を確認します。まだ実施・検証前なので、効果が出た実績としては扱いません。
冬草を一種類ではなく混ぜるのは、深さや広がりの違う根を増やし、植物・昆虫・微生物を含む生物多様性を底上げしたいからです。そこへ天敵も暮らせる環境を重ね、特定の害虫だけが一気に増えにくい畑へ近づけたい。
もちろん、冬草ミックスを播けばニジュウヤホシテントウが必ず減るとは言えません。これは来年に向けた仮説です。発芽したか、どんな虫が増減したか、トマトの被害がどう変わったかを観察して判断します。
少ない種も、失敗も、次の畑へつなぐ
小松菜は少量、ほうれん草はたっぷり。トマトは全滅。結果だけを並べるとばらばらですが、どれも次の畑をつくる材料です。
自家採種した種を同じ土地へ戻し、連作の中で育ち方を見ながら選抜と世代更新を重ねる。すぐに土地へ適応すると断定はできませんが、土・気候・生き物との関係を種の次世代へつないでいくことはできます。その積み重ねが、アリカの考えるテロワールです。
草に埋もれた畑を刈り開き、三つの葉物から種を採り、唐箕で選び、もう一度播く。来年は冬草ミックスとトマトの観察も加えます。完成した畑の話ではなく、途中の失敗まで含めた葉物畑の続きです。
参考資料
- 奈良県「トマトの害虫」:ニジュウヤホシテントウの食害部位を確認。
- Nature Communications(2018):根から放出される物質と根圏微生物、次世代の植物反応を扱った研究。トウモロコシ等の特定条件での結果です。
- PNAS(2012):菌根菌との共生における植物由来炭素と窒素移送を扱った実験研究。一般化には条件差があります。
