今回の結論は、一度は全滅しかけたイチゴが持ち直し、次の株を育てる段階まで進んだということです。
親株から伸びたランナーの先に子株ができていたため、土を入れたポットへ固定する「ポット受け」を行いました。ランナーはまだ切らず、親株とつないだまま、子株が自分の根を伸ばすのを待ちます。
厳しい状態から回復した株を観察し、この畑で次へつないでいくための一歩です。
5月の植え付け後、一度は全滅しかけました
アリカが自然栽培を行うこの畑に、イチゴの苗を植えたのは5月です。しかし、植えたあとの状態は決して順調ではありませんでした。
株は一時、ほとんど全滅するのではないかと思うほど弱りました。このまま残らないかもしれない。そんな状態まで落ち込んだイチゴでしたが、その後、少しずつ葉を出し、株の勢いを取り戻していきました。
そして今回、親株から赤みを帯びた長い茎――ランナーが伸び、その先に小さな子株ができているのを確認しました。「枯れずに残った」だけではなく、次の株をつくろうとするところまで回復した。その変化が、今回いちばんうれしかったことです。
ランナーの子株を、土入りポットで受けました
イチゴは、親株からランナーと呼ばれる茎を伸ばし、その先に子株をつくります。今回は、その子株が出ている場所へ土を入れたポットを置きました。
まず、子株の位置とランナーの長さを見ながら、届く場所にポットを並べます。次に、子株の付け根がポットの土へ触れるように置き、浮き上がらないよう固定具で軽く押さえました。
この段階では、ランナーを親株から切り離していません。親株とつながった状態を保ちながら、子株自身の根がポットの中へ伸びていくのを待ちます。
ランナーのポット受け作業
土入りポットの準備から、子株を固定したあとの状態まで。
なぜ、親株とつないだまま根付かせるのか
子株が十分に根を張る前に切り離すと、自分の根だけで水分を吸わなければなりません。今回は親株からのつながりを残し、子株がポットの土へ根を張る時間を取ることにしました。
イチゴの育苗では、ランナーから出た子株を黒いポリポットで受ける方法が実際に使われています。農林水産研究情報総合センターに掲載された研究成果でも、黒色ポリポットを用いる「ランナー受け方式」が一般的な育苗方法として説明されています。参考:分解性ポット利用によるイチゴの省力育苗法。
ただし、根付く速さやその後の育ち方は、株の状態、土、水分、気温などで変わります。今回は根の量をまだ確認していないため、「もう苗になった」とはせず、これからポットの中で発根したかを見ていきます。
「自然栽培に適応した」と感じるほどの回復でした
一度は全滅しかけた株が持ち直し、ランナーを伸ばすまでになった姿を見ると、アリカの自然栽培の環境に少しずつなじみ、適応が進んでいるように感じます。
ただし、今回確認できたのは、葉が増え、株が回復し、ランナーと子株ができたことです。「自然栽培への適応」を比較試験や数値で確かめたわけではありません。ここでは、畑で見えた変化と、そこから得た手応えを分けて記録します。
植物は光合成で得た炭素の一部を根から根圏へ出し、微生物群集との関係を形づくることが研究で示されています。また、菌根菌との共生では、植物と微生物の間で炭素と養分をやり取りする関係があります。参考:Root exudate metabolites drive plant-soil feedbacks on growth and defense。
一方で、この畑のイチゴの根圏や微生物量を測定したわけではありません。今回の回復を微生物だけの働きと断定せず、今後の生育と次の株の様子を見ながら確かめていきます。
種ではなく、株をつないでいく
イチゴをランナーから増やす方法は、厳密には自家採種ではなく、親株から子株をつくる「栄養繁殖」です。それでも、この場所を「種をつなぐ畑」として育てていく考えに通じる作業です。
アリカでは、種から育てる作物は自家採種と連作を重ね、この土地で世代をつないでいくことを目指しています。イチゴでは今回、回復した親株から伸びた子株を残し、株として次へつなぎます。
種であっても、ランナーであっても、その土地で実際に育ったものを観察し、次へ残す。青森の気候、土、植物、微生物との関係を何年も積み重ねていくことが、アリカのテロワールを育てることにつながると考えています。
現在の確認と、これから見ること
5月に植えたあと全滅しかけたイチゴが、葉を増やして回復した。
親株からランナーが伸び、その先に子株ができた。
子株を土入りポットへ置き、固定具で押さえた。
ランナーはまだ親株とつながっている。
一方で、子株が十分に発根したか、親株から切り離したあとも育つか、次の年まで残るかは、まだ分かりません。
これからポットの土の乾き方と子株の様子を見ながら、根付いたことを確認してから切り離します。その後、どの株が元気に残るかも記録します。
アリカの畑は、2026年に自然栽培への移行を始めたばかりです。現在は、できるだけ耕さない不耕起を原則に、生きた根を残し、これから夏草・冬草のカバークロップや、植物・昆虫・天敵を含む生物多様性も畑に合わせて育てていく計画です。完成した姿を先に語るのではなく、回復も失敗も、こうした小さな変化から記録していきます。
全滅しかけたイチゴが、今度は次の株をつくろうとしている。この畑のイチゴは、残る段階から、つなぐ段階へ進み始めました。
