「肥料を入れない」と聞くと、作物に必要な養分まで無視するように感じるかもしれません。アリカが目指すのは、養分を考えない畑ではなく、外から肥料を足して生育を整えることを前提にせず、根・微生物・草・土の関係を育てる畑です。
このガイドの結論
アリカは、化学肥料・有機肥料・家畜ふんなどを原料とする堆肥を畑へ入れません。
肥料を入れないこと自体を目的にするのではなく、作物が光合成でつくる炭素、生きた根、根圏の微生物、草による地表の覆いを生かし、畑の中で養分が巡る状態を長い時間をかけて育てます。
- 肥料を入れない=植物に養分がいらない、ではありません。
- 何もしないのではなく、発芽・生育・草・水分・虫・病気・収量を観察します。
- 生育や収量が必ず良くなるとは約束しません。
- 2026年は完成形ではなく、慣行栽培から自然栽培へ移る途中です。
なぜ、外から肥料を入れないのか
肥料を使えば、作物が利用しやすい養分を外から補えます。それは農業で広く使われている方法であり、肥料を使う農業そのものを否定するために、アリカは無肥料を選んでいるわけではありません。
アリカが育てたいのは、投入した養分で作物だけを早く大きくする状態ではなく、植物・根圏微生物・土が関わる養分循環です。すぐに結果をそろえるより、畑そのものが働ける状態を積み重ねることを優先します。
生育が遅い、株がそろわない、収量が少ないときも、すぐ肥料で補う前に、種まきの時期と深さ、土との接触、草の競合、水分と排水、品種、天候、虫や病気を確認します。
出発点は、光合成と生きた根
植物は光合成で得た炭素の一部を、糖や有機酸などの形で根から根圏へ出します。こうした炭素を含む物質を、ここでは分かりやすく液体炭素と呼びます。
根のすぐ周りにある根圏では、この物質が微生物の活動や集まり方へ関わります。つまり作物の根は、土から一方的に養分を吸うだけでなく、地下の生きものとの関係をつくる入口でもあります。
微生物や菌根菌との交換
根圏には多様な微生物が暮らしています。菌根菌との共生では、植物が炭素を渡し、菌根菌が窒素やリンなどの養分を得る手助けをする関係が研究されています。
ただし、すべての畑、作物、微生物で同じ交換が起きるわけではありません。肥料を入れなければ共生が必ず強くなる、菌根菌がいれば肥料と同じ収量になる、とは断定できません。
アリカでは、研究の仕組みをそのまま自分たちの畑の実績に置き換えず、発芽、生育、根、草、虫、病気、収量の記録を積み重ねて確かめます。
根のつながりを切りすぎない
生きた根と微生物の関係を続けるため、アリカは不耕起を基本にしています。土を全面的に大きく動かす回数を減らし、根の通り道、菌糸、土の層や構造を必要以上に壊さない考え方です。
一方で、耕さないこと自体が目的ではありません。種を土へ接触させる溝や穴をつくり、長いも・ごぼうの栽培や収穫では必要な範囲の土を動かします。硬さや排水の問題も放置しません。
草をなくさず、根がある時間を増やす
作物がない時期にも生きた根を残すため、これから圃場ごとに夏草・冬草を混ぜたカバークロップを使います。深さや広がり方の異なる根を増やし、地表を覆い、土の生きものが関われる場所を増やす計画です。
草はすべて放置するのでも、すべて取り除くのでもありません。作物より高くなって光を遮る、水分を競う、作業を妨げる場合は、刈る・倒す・敷く・残すを使い分けます。
植物の種類が増えれば、昆虫や微生物が暮らせる場所も変わります。アリカは、生物多様性を高め、作物を食べる虫だけでなく、その虫を捕らえる天敵も暮らせる畑を目指します。これも効果を保証するものではなく、観察して確かめる計画です。
自家採種・連作・テロワールへつなげる
将来は、自家採種と連作を重ね、同じ土地で種を選び、作物と根圏微生物の関係を世代ごとに観察します。自家採種をすれば必ず土地へ適応する、連作障害がなくなる、という意味ではありません。
青森の土地や気候だけでなく、生きた根、微生物、夏草・冬草ミックス、自家採種、連作、畑で重ねる時間。その全体を、アリカではテロワールとして育てていきます。
2026年の現在地
- 慣行栽培をしていた畑を引き継ぎ、自然栽培への移行を始めた年です。
- 肥料・農薬・除草剤を使わず栽培しています。
- 夏草ミックスは時期に間に合わず、2026年は未実施です。
- 冬草ミックスからカバークロップの本格実施を始める計画です。
- 自家採種した種は現在0で、購入種には有機由来と慣行由来の両方があります。
- 不耕起が原則ですが、長いも・ごぼうは例外です。
つまり、土・種・生物多様性まで育った完成形をすでに実現したとは書きません。今できていること、まだできていないこと、これから行う計画を分けて公開します。
研究から分かること
PNAS掲載研究では、宿主植物からの炭素供給が、アーバスキュラー菌根菌による窒素の吸収と輸送を促すことが実験で示されています。
Nature Communications掲載研究では、根から出る代謝物が根圏微生物群集と植物—土壌の関係へ影響することが示されています。
研究の限界と、反対側の現実
これらは、根から出る炭素と微生物の関係を支える研究です。しかし、アリカの全圃場で同じ強さの効果が起きることや、無肥料だけで必要な収量を得られることを証明するものではありません。
外から養分を補わない畑では、移行期に生育が遅れる、株がそろわない、収量が下がる可能性があります。天候、土、作物、品種によって結果も変わるため、方法の正しさではなく、実際の結果を記録して判断します。
アリカが畑で確認すること
- 発芽:時期、深さ、土との接触、雨と乾燥、そろい方
- 生育:新しい葉、株の大きさ、根元、株ごとの差
- 草:高さ、勢い、作物との競合、地表の覆われ方
- 土と水分:乾燥、水分過多、排水、硬さ、表面の状態
- 虫と病気:種類、数、範囲、広がり方、天敵
- 結果:収穫量、形、傷み、食べたときの記録
観察は、作業をしない言い訳ではありません。今すぐ手を入れない場合も、何をいつ見直すかを決め、変化が広がれば対応を変えます。
2026年の畑記録
これらは成功だけを並べた証明ではなく、その時点で畑に何があり、どんな作業をし、どう見えたかを残す一次記録です。
もっと深く知りたい方へ
自然栽培全体のつながりは、自然栽培とは? 肥料・農薬・除草剤を使わず、草と一緒に育てるアリカの畑で、写真と研究を交えて詳しく説明しています。
自然栽培の入口と読む順番は、アリカの自然栽培方針とアリカの自然栽培カテゴリから確認できます。
次に読むガイド
肥料を入れない理由の次は、虫・病気・草とどう向き合うかを、農薬・除草剤に頼らない畑づくりでご覧ください。
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